茨城県妖怪探検隊・探訪記
茨城県高萩市

狐のご祝儀

地図


 2011年12月
 取材とレポート 士郎


『高萩市民文化誌2002「ゆずりは」第八号』に、宇佐美清凱さんという方のエッセイが「狐のご祝儀」というタイトルで載っているのを見つけた。高萩市安良川の一帯に伝えられる「狐」に関する逸話がいくつか紹介されている。
 その中でもタイトルの「狐のご祝儀」は、以下のようなものだ。
 
 大きな建物が無かったので庭に立つと石滝の上の山が手に取る様に、東南は花貫の上の稲村さんから、西は秋山の方まで今の上台方面一帯がよく見えた。
 毎年十月から十一月頃になると必ず毎夜のように八時から九時頃、五十個位の提灯のような灯が並んで、点滅しながら歩くように動いていた。おふくろ連中が集まって
「ホラ今夜も狐のご祝儀が始まったぞ、又雨になっから、焚き木は全部木小屋へ込めよ」
 そうすると、必ず二、三日後には雨が降った。
(本文より抜粋)

 毎夜のように「狐のご祝儀」があったら、毎日のように雨が降っていたのか……という野暮な突っ込みはやめておこう。

 さて、今回はその「狐のご祝儀」が現れたという地を歩いてみた。高萩市の石滝から日立市の上台にかけての一帯だ。

 高萩市の安良川から日立市の上台方面を望む。
 巨大なパラボラアンテナはKDDが所有していたものだが、現在は茨城大学宇宙科学教育センターが管理している。 

 高萩市安良川から石滝を経由して日立市上台方面へと行ってみよう。
 まずは、日光のいろは坂のような坂道を上らなくてはならない。地元では「びんずる坂」と呼ばれ、きついカーブが連続する。
 その「びんずる坂」の上り口に、鳥居を発見。
 

 上台方面へと向かう途中の「びんずる坂」にあった神社。
 鳥居には「秋葉神社」とある。
  

 鳥居の奥を覗いてみると、祠が一つ寂しそうに鎮座していた。

 狐にまつわる神社といえば「お稲荷様」だが、ここはなんと「馬力神」だった。
 あれれ……。
   

 さらに坂を上ると、すぐに次の鳥居が目に入る。

 もう一つの神社も「秋葉神社」だった。
 どうでもいいことだけど、秋葉……といえばAKB48。あー、名前と顔が一致しない。

 おそらく先の神社のご本尊だと思うのだが……。

 うーん、こう横一直線に並ばれると、お参りの仕方に戸惑う。
 とりあえず、御幣が掲げられてある祠をご本尊と見たが、それで良かったのか?

 狐にまつわる神社ではなかった。
 ちなみに、お稲荷様自体が狐なわけではなく、稲荷神に仕える眷属が妖狐なのだ。

 上台から高萩方面を望む。
 田畑と森林、あとは民家がぽつりぽつり。
 もっとも、この位置から北東には、住宅地が広がっている。

 なんとなく狐が棲んでいそうな田園地帯だったが、最近では猿が高萩の海岸地区に出没するのだから、いてもおかしくはないだろう。
 とはいえ、住宅が密集している地区もあるので、狐があやかしとなって現れることは期待できそうにもない。



 で、ここからは追加の取材

『高萩市の昔話と伝説』によると、狐のご祝儀は、上台と向かい合う北側の高台にある八幡宮(八幡神社)にも現れたらしい。注連立松(しめたてまつ)に十五、六の燈(あやかし)が並んだという。
 こちらの怪異もやはり、安良川の同じ場所から見えたそうだ。

 ページトップの写真を撮影した場所から、上台とは逆の方向である北を望む。
 高台の中央に小さく見えるのが高萩小学校である。その向かって左奥に八幡神社がある。

 八幡神社の第一鳥居の横に稲荷神社があるが、曰くありげである。
 八幡神社と稲荷神社については「八幡神社と市杵島神社(いちきしまじんじゃ)」で。



 で、ここからはさらなる追加の取材

 上台方面に向かう「びんずる坂」の途中にちょっと不気味な箇所があったので。


 びんずる坂はつづら折りのコースだ。
 上台に向かって坂を上ると、最初のカーブが左カーブ。
 そこを曲がって左側に駐車スペースがある。
 
 駐車スペースには「びんずる坂」の標識がある。
 駐車スペースから坂を上りつつ右カーブを曲がり、向かって左を覗くと、石碑が見える。
 手前が文化13年の「奉唱光明真言供養」で、奥が明治100年(!)の「大東和戦争軍馬徴用慰霊碑」だ。
 そして岩壁には防空壕らしきものが並ぶ。
 これらの穴は、奥で横穴として繋がっている。
 見上げれば、木が崖の横から生えていた。



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 茨城県の妖怪豆図鑑 「狐」

 終わり。


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